ペットとしても人気の高いフェレットのフィラリア予防についてすこし触れたいと思います。
フィラリア症とは、犬糸状虫(フィラリア)とよばれる寄生虫(Dirofilaria immitis)というソーメンのような線虫が、心臓の右心室から肺へ向かう動脈に寄生することで生じる病気です。感染動物の血を吸った蚊に刺されると、皮下組織に幼虫が入り込み脱皮を繰り返し心臓から肺に向かう血管へ移動をします。
明治製薬フィラリア症のお話より抜粋 |
寄生虫感染により生じる症状はフェレットでは、食欲・元気不振、腹水貯留、呼吸困難、咳と慢性経過をたどるケースから、肺血栓症を生じることによる急性死までさまざまです。
当院近隣では、犬の予防効果も高まってきており犬のフィラリア症さえ見る機会が少なくなっていることから(100頭に1頭くらいでしょうか)、フェレットでの感染例を開院してからはまだ見たことがありません。獣医になりたての十数年前には、フィラリア症の犬を診ない日は無いくらいに日常にあふれた感染症だったことを思うと考えられないことです。
診断・予防・治療は?
犬とは異なり、血液検査でフィラリアの子虫であるミクロフィラリアが検出されるケースは犬とは異なりほぼありません。また、犬で行われるフィラリア成虫を検出するELISA検査(キットの使用)では、感度が低く偽陰性(感染しているにも関わらず陰性となること)が出ることから確定診断をすることはできません。一番高感度な検査は、PCR検査による診断ですが商業ベースで行われていないため、現状、症状とレントゲン検査、エコー検査を組み合わせて診断しています。
予防は、犬と同じように毎月イベルメクチンという内服薬の投与、皮膚へのスポットタイプの外用薬などがあります。
そのため当院ではフィラリア予防薬を与える前に無症状のフェレットにおいては、血液検査による感染確認は行っていません。
すでに感染してしまい症状がでているフェレットでは、心臓病への支持治療とモキシデクチンによる治療(新たな感染予防)を行います。Vena Cava症候群といわれる状況においては、外科的な摘出が試みられることもあります。
実験的に犬糸状虫を感染させた症例で注射による成虫駆除を行った治療の死亡率は14%から43%であったとの報告があります。
体格が小さくフェレットの心臓では数隻の寄生虫の感染でも大きな影響が出てしまいます。
いずれにせよ、予防にまさる治療なしです。
よく人は大丈夫かと聞かれます。本来の宿主では無いので、人の感染報告はごく稀ですが眼球内に寄生された感染例もありちょっと怖い病気です。
幸い感染している動物が周囲に少ない状況であれば、より心配は少ないのではと思って暮らしていますが。。。。運が悪ければ感染してしまうこともあるかもしれません。