2014年10月8日水曜日

ウサギの全身麻酔は命がけ?

 

ウサギは体の割合にたいして胸部が異常に小さい!つまり肺の領域が極めて小さいという特徴があります。
呼吸器系疾患(呼吸困難や努力呼吸)がある場合は、ストレスのかかるレントゲン検査等を行うことが極めて困難となるケースがしばしばあります。
検査で死なせてしまうことになっては元も子もない!と思うと、呼吸の悪いウサギさんには迂闊に手も出せません。
もちろん健康であればさほど問題とならない処置であっても、こと病気時のウサギさんへの検査、治療は犬猫に比較すると非常なストレスとなることが多いです。
そんなこともあって、全身麻酔に関しても、ウサギさんは弱くて犬猫に比べると簡単に死んでしまうと思っている方が多いように思います。
健康な子が早々簡単に死ぬことはありませんが、やはり病気のために手術を受ける機会が増えていると考えると、麻酔のリスクは犬猫と同等とは言えないのは事実です。

また、ほぼ心肺停止状態で運びこまれたウサギに対して気管挿管を行って心臓マッサージを施したとして生還を果たしたウサギさんにこれまで遭遇したことがありません。ストレスに対する弱さは草食獣の宿命なのかもしれません。とにかく、麻酔に関しては出来るだけしっかりモニターを行い事故を未然に防ぐに越したことが無いと考えています。

ウサギ麻酔.jpg気管挿管されたウサギ


安全に麻酔管理を行っていく上で、犬猫ではルーチンに行っている気管挿管ですがウサギでは気管入口を肉眼で目視することが出来ず、盲目的に気管挿管を行っていました(内視鏡等で覗くという方法もありますが)。1.5キロ未満の小型のウサギとなると、盲目的に気管挿管を行うのは困難であることが多く、また、盲目的に何度もトライすることで気道入口を傷つける危険性も高まってしまいます。
気管挿管のメリットというと、呼吸管理が麻酔中もしっかり行えるというところですが、気管になんとか挿管しようと頑張りすぎて気道を痛めてしまうといった問題を生じるわけにもいかず、挿管がダメな場合はマスクによる麻酔管理を行っていました。
昨年海外からウサギ用に開発された気道チューブ(V-Gel)を購入できるようになったおかげで、1キロ未満のウサギさんであっても楽に呼吸管理を行えるようになりました。もちろん細いチューブですので内腔に液が詰まって窒息することが無いように注意は必要です。

麻酔中も呼気二酸化炭素濃度も測定でき、呼吸補助も行えより安全な麻酔管理がどのウサギさんでも行えることになりました。
これで麻酔リスクがゼロになったわけではありませんが、精度は以前よりよくなってきていることは確かです。
せっかくなので、ウサギさんだけじゃなくジリスやハリネズミ、ハムスターとかの気道チューブも作成されるとうれしいですが。